1. 人物概要
- 本名:芥川 龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
- 生没年:1892年(明治25年)–1927年(昭和2年)
- 職業:小説家、翻訳家
- 代表作:「羅生門」「地獄変」「鼻」「蜘蛛の糸」「竹取物語」注釈 など
2. 生涯の軌跡
- 幼少期〜学生時代
- 東京生まれ。早くに父を亡くし、母の精神疾患もあって親族に預けられるなど不安定な家庭環境で育つ。
- 第一高等学校を経て、1915年に東京帝国大学英文科を卒業。
- 文壇デビュー(1915–1920)
- 同人誌『新思潮』に短編を発表し注目を集める。
- 1916年発表の「羅生門」で文壇に一躍名を馳せる。
- 創作の最盛期(1920–1926)
- 仏典や古典文学への造詣を生かし、道徳的・宗教的モチーフを扱った作品群を発表。
- 「地獄変」「蜘蛛の糸」「鼻」など、不朽の名作を次々と世に送り出す。
- 晩年と死(1927)
- 過労や精神的疲弊から体調を崩し、自殺。享年35。
- 生涯で約150編以上の短編を残し、日本近代短編小説の基礎を築く。
3. 代表作と見どころ
作品名 | 発表年 | あらすじ・特徴 |
---|---|---|
羅生門 | 1915年 | 平安末期の荒廃した羅生門を舞台に、人間の善悪と利己心を鮮烈に描く。 |
鼻 | 1916年 | 長い鼻を恥じる僧侶が、呪術で鼻を落とすもさらなる苦悩に陥る滑稽悲劇。 |
蜘蛛の糸 | 1918年 | 極楽で蜘蛛の糸を垂らされる極悪人。善行の一瞬と人間の弱さを寓話的に表現。 |
地獄変 | 1918年 | 傲慢な画家が地獄図を描くために我が子を犠牲にし、業の深さを問う衝撃作。 |
4. 文学的特色
- 短編の名手:無駄をそぎ落とした精緻な構成で、1篇に深い問いを凝縮。
- テーマの普遍性:善悪、業(カルマ)、虚無など、人間存在の根源に迫る哲学的要素。
- 古典・仏典の引用:日本古典や仏教思想を巧みに織り込み、日本的寓意を強化。
- 語りの多重性:一つの出来事を複数の視点で語る実験的手法も。
5. 現代への影響
- 教科書や短編アンソロジーで必ず採録される基礎文芸。
- 漫画化・映画化・演劇化が多く、多角的に再解釈され続ける。
- 「人間の業」を扱う文学の手本として、現代作家にも大きな示唆を与えている。
5分で読めるポイントまとめ
- 短篇で人間の善悪・業を鋭く抉る名手。
- 「羅生門」「蜘蛛の糸」「地獄変」で象徴される寓意性。
- 古典・仏典の引用で深まる作品世界。
- 若くして逝去も、約150編で短編小説の金字塔を打ち立てた。